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とにかく萌えを吐き出す為に作ったので 何も萌えが無い時は失踪するかもしれません。18歳未満閲覧禁止。

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愛のかたち 4
また小出しでスミマセン
よろしければ続きからどうぞ









情事の後、藤田とは別々に屋敷に戻り、百合子は湯浴みをするため風呂場へと向かう。
脱衣所で着物を脱いでいるときに、ふと何か違和感を感じた。
(!?)
左の乳首の下辺りに何か固いものがある。恐る恐る右手で触れるとかなり大きいように思えた。
(まさか…)
全身から血の気が引いていくのが分かった…。

震える手を落ち着かせながら湯浴みを終えると、屋敷に戻っていた藤田を伴って、途中で自動車(くるま)を拾い、屋敷から離れた大きい病院へと向かった。女中たちには買い物に出ると嘘を吐いて。
藤田は、病院の待合室で呼ばれるのを待っている間、落ち着かない様子で座っている百合子を心配そうに見つめていた。
「大丈夫ですか?…奥様……。」
「え、えぇ。大丈夫よ。」
大丈夫と言いながらも青い顔をした百合子を落ち着かせようと、子供をあやすように背中を優しく叩いた。
少し落ち着いてきた頃、看護婦に呼ばれ、一人で診察室へと入っていく百合子の後姿を、藤田は不安な面持ちで見つめた。
小奇麗で清潔感に満ちた待合室は比較的混んでおり、皆一様に自分が呼ばれるのを今かと待ちわびている。ある女性は、藤田の容貌が珍しいのか、じろじろと不躾に眺め、ある男性は新聞を広げて読んでいた。
どれだけ時間が過ぎたのだろうかと懐中時計を見ると、まだ10分しか経っていない。もっと長く待っていたような感覚にやきもきし始めた。
しばらくすると、診察室のドアが開き、中から百合子が青い顔をして手招きをしている。
何事かと藤田は急ぎ足で診察室の中に入っていった。
中に入ると、白衣に身を包んだ年老いた医者が眼鏡の奥からこちらを見ている。
藤田が、椅子に座っている百合子の後ろに立つと、おもむろに口を開いた。
「今、奥さんには言いましたが…、病名は……。」
少し言い難そうに告げられた病名に、藤田は頭の中が真っ白になった。
「手術をすれば助かる可能性もありますが……。」
助からないかもしれない……。その後に続く言葉は容易に想像できる。
「手術を受けなかった場合……いつまで生きられますの?」
俯き、膝の上で固く手を握りしめながら、百合子が問う。医者は確かなことは言えないとしながらも、1年くらいだろうと告げた。
少しの間考え込んでいた百合子が何かを決意したかのように顔を上げる。
「私、手術は受けません。」
きっぱりとした口調に医者よりも藤田の方がひどく驚いていた。
「な、何を仰るんですか!?手術をすれば助かるかも知れないのですよ!」
藤田は、百合子の顔を覗き込み、悲痛な面差しで訴えたが、百合子は静かに首を振るばかりだった。

百合子は診察室を出るとき、この事は他言無用とその場にいる全員に強く念を押した。
夫にだけは知られてはいけないと思ったからだ。あの男は百合子をなんとしても生かそうと、手術をさせるだろう。そういう行動をとるだろうことは簡単に想像がつく。
だが、それだけは嫌だった。いくらお嬢様といえど、この手術がどういうものかは知っている。この手術を受ければ、藤田に乳をやることができなくなるのだ。
たとえ片方のみとしても、藤田の事を考えると手術を受けたくはなかった。
屋敷へ戻る自動車(くるま)の中、二人は無言だった。どちらかが口を開けば、どうしようもない絶望に涙を流すことが分かっていたからだ。
屋敷の門をくぐり、出迎えた女中に目もくれず、二人は百合子の自室へと入っていった。
百合子が長椅子に座ると、藤田は、その膝に縋り付き声を殺して泣いた。大の男が肩を震わせて泣くなんて…と思いつつ、百合子は、自分の為に泣いてくれている藤田の頭を優しく撫でてやる。
「泣かないで、藤田。これは私が決めたことよ。」
「ですが!若様も姫様もまだ幼く…奥様を必要とされていらっしゃいます!……あまりにも…お可哀想です…。」
涙に濡れた顔を上げ、声を詰まらせながら訴えかける藤田に、百合子の胸は締め付けられる思いだった。
「純一さんが立派に育ててくれるわ。」
ニッコリと寂しそうに笑う百合子を見て、藤田は悟った。何を言っても考えを変えないのだということを。

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